「つながる地域のものづくり」第8回 ワダマキ氏【意味のあるもの作りをしたい】

「つながる地域のものづくり」第8回 ワダマキ氏【意味のあるもの作りをしたい】

地元を拠点とし、ものづくりに取り組む人々にスポットを当てる本企画。
日本が誇る技術を継承する職人、古き良き伝統を紡ぐ工房、地元を盛り上げる取り組みに挑戦する企業など、地域に根差してものづくりと向き合う匠たちを紹介していきます。

第8回は、ジュエリー作家のワダマキ氏。セルフリノベーションした滋賀の古民家で暮らしながら、ジュエリー作家として活動しているワダさんに、作品作りに対する想いや、今興味を持って取り組んでいることなどをお聞きしました。

Instagram:https://www.instagram.com/wadamaki_tsumugi/
note:https://note.com/wadamaki/
ONLINE SHOP:https://wadamaki.official.ec/
ホームページ:http://tsumugi.mazarbebracha.com

独学でジュエリー制作をスタート

私は滋賀県で、古民家をセルフリノベ―ションし、家族と猫2匹とにわとりと暮らしながらジュエリー製作をしています。この仕事を始めるきっかけは、洋服作りをしていた友人から「アクセサリーを作って」と頼まれたことでした。特に経験はなかったので戸惑いながら引き受けたのですが、独学でやってみたら自分の手から見たことがないものが出てくることがとてもおもしろくて。

まさか自分がもの作りをするようになるとは。絵を描くのが苦手だったので、興味はあったけれど美術的なことは向いていないと思っていたんです。でも、頭の中に思い描いているものを立体にすることはとても驚きが多かったし、楽しかった。友人がくれたきっかけがなかったら、今もの作りをしていることはなかったですね。

作品にストーリ性を。「意味のあるもの作りをしたい」

勉強をはじめてからは、とにかくいろんなものに興味を持って見るようになりました。そんなある日、犬の散歩をしていたら、葉っぱに溜まった水に目を奪われたんです。光を受けてキラキラ輝く様がとてもきれいで。「こんなきれいなものが世の中に存在するのに、これ以上人間が何を作る必要があるんだろう」「もの作りをするんだったら、意味のあるものを作りたい」と感じたことが、私の中の原動力になりました。

“意味のあるもの作り”を考えた結果、物語性のある作品作りにたどり着きました。当時は「作品と物語がセットになっている」というコンセプトが珍しく、たくさんの方に受け入れていただけたんだと思います。

mazar be Bracha(マザールベブラハ)というブランド名で初めて作ったものは、男の子がキラキラしたものを身につけたくて、自分の使い古したライターの中に彼女の宝石を詰め込んだ…というコンセプトで作った「ジッポネックレス」。営業販売をしてくれるエージェントが現れたこともあり、6,000個以上売れるロングセラー商品になりました。

量産型のものづくりに疲弊

何も分からないながら必死に勉強していたんですが、アパレルはものすごくサイクルが早くて3年ほどでついていけなくなってしまったんです。お店に置いてもらっても、全部が売れるとは限らないじゃないですか。必死で考えて作ったものがすぐセールになり、消えていくことに疲弊して、違和感もありファッションに合わせた活動はお休みすることにしました。

その時ちょっとおもしろい出会いがありまして。不思議な力があるという方に「あなたの後ろに屋久島が見えます」って言われたんですよ。屋久島?と思ったんですが、深く考えず行ってみるだけ行ってみようと足を運んでみたら、自然の中に抱かれることで、私の中で何かが目覚めたんです。
自分の興味も変わって、自然に向いていると思った。そうしたらもう都会では暮らしていられないなと、当時住んでいた大阪から今暮らしている滋賀県高島市に移住しました。

女郎蜘蛛に感銘、古民家で再スタート

移住し心身が元気になってきたことで、また自分の中で無理なく「表現したい」という気持ちが湧いてきました。でも作ったものを売ろうとすると、都会のお店に置いてもらいに行かないといけません。そうすると、都会の時間に合わせて動かないといけない。田舎で暮らしているのに、結局暮らし方が都会と変わらない状態になってしまうのには違和感がありました。

その頃、毎日犬の散歩のために山に入っていて、女郎蜘蛛が巣を作っているところを日々観察していました。女郎蜘蛛はメスが巣を作っています。自分で巣を張って、お腹の子を育てるために食べ物を獲って、子どもを産み落として土に還っていく。すごいなと感銘を受けました。

その姿に憧れ、自分でリノベーションできる古民家を探して、主人と2人で半年ぐらい自分たちで屋根から何から全部直しました。その家で暮らし始めた頃に子どももできて、その子がある程度大きくなった頃、私の作品を買ってくださった方が結婚指輪の制作を依頼してくださったんです。お引き受けして、久しぶりに指輪を作ったらすごくおもしろかった。「意味のあるものを作りたい」「物に物語を込める」という考えが、こんなに活かされるジャンルはないなと。だんだんと「このためにアクセサリーを作ることを仕事として始めたのかもしれない」と思うくらい、自分に合っていると思うようになりました。

オーダー制で無駄のないサステナブルなもの作り

今私が作っているジュエリーはすべてオーダーです。在庫を持つと、どうしても無駄が出るので。それから、指輪を届ける時に必要なケース、あれも最終的に不要になりますよね。だから、自分が作るなら全部土に還るものにしたいという思いがあって、最近は、山から採ってきた赤土とびわこの砂を混ぜて自然乾燥させて、身の回りにあった植物をクッションにして、粘土を原料とした塗料を塗って箱を作って、すべて土に還る箱を提供しています。

今まで、既成概念と違和感の狭間で諦めていたことがいい形に解決できてきて、量産することは難しいですが、自分が本当に納得いくものが作れるようになってきた感じがしています。

お米に樹皮。自然に形をもらう“もの作り”

今は、お米や樹皮といった自然の素材をモチーフにしたアクセサリーを作っています。自然の中で暮らすことで、形作るというより自然から形をもらうことが多くなりました。自然には本当に美しいものは無数にあるので、観察して、いろんなものを見れば見るほど自分の目の解像度が上がるので飽きません。

例えばお米。お米って何代にも渡って日本人の身体を大きくしてきてくれたものじゃないですか。田舎で暮らしはじ めてから、自分でも種を蒔いてみたんです。当たり前なんですが、土から芽吹いて、土に還っていく。土のないところで育ったので、その姿に感動した気持ちを形にしました。

それからオリーブの樹皮を使ったリングは、人間と植物の関係を考える中から生まれたものです。オリーブは夫婦の木とも言われていますし、古くから信仰されていたので、気持ちを寄せる対象として樹皮をいただきました。

私はアーティストでも職人でもなく、自分の頭の中にあるものを形にしたらどうなるか、それを見たいがためにもの作りをしています。そうやって自分が作ったものに興味持ってくださった方と、分かち合えたらいいなと思っています。

アースバックハウスを集う場所に

最近、自分の仕事を通じて知り合った方々にも、今のこの環境を味わってほしいなと思うようになりました。そこで、今はアースバックハウスという建物を作っています。アースバックハウスというのは、土を袋に入れて積み上げて作る建物です。

はじめはこの地域の人が集うイメージでみなさんに協力いただきながら作り始めましたが、自分が面白いと思うものを作っていたら、遠くからも共感して集まってくれるようになり、驚きました。SNSを見て飛び込みで来てくださる方もいたり、建築を通して今まで出会ったことのない人にも出会うことができました。人がいいと思うものを作るより、自分がいいと思うものを追求していけば、距離に関係なく共感してくれる人に出逢えるんだと実感しましたね。

この取り組みを通して、場所にエネルギーを注ぎ込めば注ぎ込むほどどんどん蓄積されて、そこに人が集えばまた新たなエネルギーを生むという発見があって、場所にエネルギーを注ぎ込むことの面白さを感じています。人が集って持っている力をわけあうと、お互い豊かになって視野が広がると感じ始めているところです。

自分ひとりでできることってたかが知れていて、子どもの関係でいろいろ地域活動をしていますが、地域に限定してしまうといろいろ限界を感じることもあるんです。でもアースバックハウス作りのように、そこにいろんな人が参加してくれることで、豊かさが生まれるんだと感じています。

本業のジュエリー制作は、一生身につけてもらえるオーダーメイドを作らせてもらっているので、とにかく自分が曇ってないハッピーな状態で作りたいなと思っているんです。アースバックハウスは、そのために自分が心地よくいれる場所作りをしている感覚もあります。
ジュエリー製作もアースバックハウスも、自分がいいなと思うものに共感してもらえる幸せを感じながら、この先も自分のペースで納得して生み出していけたらなと思います。

<おわり>

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