「日本のローカルな魅力について考える」をテーマに俳優・高橋健介さんがまだ知らない日本各地の名産や隠れスポット、文化などを知り、高橋的NO.1〇〇を決定していく本連載。
毎回、編集部がテーマに沿って厳選した日本のいいモノ・コト・場所を二つずつ高橋さんに紹介し、高橋さんにはどちらがより好きだったか本音で答えていただく。
第8回は「日本の夏祭りを見に行くならどっち?」というテーマで話を聞いた。
(撮影:藤井洋平/ヘアメイク:佐藤由佳/取材協力:和食 板垣 東京都足立区千住5丁目6-7)
夏に行われる東北三大祭り
G 「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜真剣乱舞祭2022〜」拝見しました。高橋さん、とても美しかったです。
高橋 ありがとうございます。知らない曲ばっかりじゃなかったですか?
G いえ、ちゃんと過去3作品ほど予習しましたので。
途中から知覚が崩壊して、今見ているのは高橋さんじゃなくて蜂須賀虎徹という別の人なんじゃないかという気持ちになっていました。そのくらいキレイでした。
それに有名なお祭りがモチーフの楽曲があって、テンション上がりました。
高橋 じゃあ良かった。疲れてくると途中で足が上がらなくなったりしちゃうんですけどね。
G 笑。それもふくめて最高でした。
ということで、今回はお祭りを取り上げることにしました。東北の夏祭りを実際に見に行くならどっちか、というテーマです。
高橋 ねぶた祭とか?
G 正解です。東北三大祭りから2つピックアップしたので、青森県のねぷた祭も取り上げます。
高橋 ねぶた?ねぷた?
G あ、すみません……公式サイトによると青森「ねぶた」祭ですね。失礼しました。
高橋 難しいですよね。正解とかない気もしますけど、どうなんだろう。
G 今調べた感じだと両方ありますが、青森の場合はねぶた祭ですね。
高橋 なるほど。
お祭りってここ数年は開催中止になったりしていますよね。
G そうですね。
高橋 こういう状況だからなかなか不特定多数で密集するようなことができないのはしょうがないですけど、お祭りはそもそも神事ですからね。それができないというのはつらいですよね。
G たしかに。
高橋 お祭りを奉納することで、厄除けとか健康を祈ったりしてきたわけですから。そういうことで気持ちから元気になることもあると思うんですよね。
G 声を出して笑ったりすると免疫力が高まるとも言われますからね。
高橋 そう。今年は開催されるんですか?
G はい。感染対策もあって、例年通りというわけではないようですが、今回紹介するお祭りは両方とも開催されるようです。2年ぶりとかじゃないですか?
今回はその東北の夏祭りを詳しく見ていきたいと思います。
高橋 楽しみです。
青森ねぶた祭について

高橋 ねぶた祭は「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜真剣乱舞祭2022〜」でも取り上げました。
G そうですよね。掛け声、どんなだったか覚えていますか?
高橋 え、なんだっけ? 僕、ねぶた祭の方は出番ないんですよね。
G そっか、高橋さんは徳島の刀だから西軍っていう感じでしたよね。
高橋 でも「ラッセラー」だったと思います。
G そうです! じゃあ、その「ラッセラー」の由来ってわかります?
高橋 えー、全然わからない。でもこういうのってだいたい訛りからきているんですよね?
G 大まかにはあっています。
ねぶたは昔、中にろうそくを立てて火を灯していたんですが、その当時は子供たちが近所の家を回ってねぶたに使う「ろうそく、出せ出せ」って言いながら歩いていたらしく、その「出せ出せ」がなまって「ラッセラッセ」になって「ラッセラー」という掛け声になったと言われています。

高橋 「トリック・オア・トリート」的な?ハロウィンみたい。
G たしかに。
高橋 でもねぶた祭って、そもそもどういうお祭りなんですか?
G 無病息災を祈念するお祭りで、もともとは奈良時代の七夕が起源だそうです。
高橋 へー。
G 青森ねぶた祭は6日間開催されて、約200万人を動員します。国の重要無形民俗文化財で、今年は大型ねぶたが17台、ちっちゃいねぶたが5台、青森駅の前を運行するそうです。
高橋 大規模ですね。
G はい。ねぶたは灯篭で、昔はそのねぶたをお祭りの最終日に海に流していたそうです。「ねぶた」というのも、作物の収穫時期は忙しくて疲れてねむくなったりしちゃうので、「ねむた(い)」を流すという意味もあったようです。
高橋 収穫は時間との勝負って言いますからね。
G 今は最終日に海を運行した後、一部を除いてほとんどが解体されます。
高橋 え。ちょっともったいないですね。
G おっしゃる通りもったいないという観点から、近年、ねぶたの彩色和紙を再利用し、ランプシェードとして販売されるようになっています。

高橋 ランプはお土産になりそう。環境とか、作り手の労力とかを思うと、お祭り後も使おうという取り組みはいいですよね。
G そうですね。

ちなみにねぶたは、ねぶた師という職人さんが3カ月以上かけて制作するんですが、その製作中のねぶたは、製作小屋に置いてあるので、扉が開いていれば制作過程を見ることができるそうです。
そして作られたねぶたは審査されて、最も優れた団体には「ねぶた大賞」が与えられるらしいです。
高橋 へー。どれもすごいですけどね。
G そして、このねぶた祭が行われる青森駅の周辺には、ぜひ立ち寄りたい場所があります。
まず、おすすめしたいのが青函連絡船です。青函連絡船って知っていますか?

高橋 青函トンネルってありますよね?新幹線が通るやつ。
G そうです。青森函館間を結んでいるトンネルですね。そのトンネルが開通する前は、青森函館間は船で通していたらしいです。JRが運営する鉄道の一部として、貨物などもその船で運んでいたんですって。今は当時の船が博物館になって船内を見学することができます。
高橋 船なのに鉄道の一部だったって面白いですね。
G ですよね。
もう一つ青森駅と言えば、「元祖 青森のっけ丼」というグルメがあります。のっけ丼というのは、海鮮が並ぶ市場で10枚綴りのチケットを買って、場内を歩きながら自分が好きなお刺身をチケットと交換しながら、ご飯の上にのっけて完成させる海鮮丼のことです。

高橋 新鮮なお刺身を好きなように海鮮丼にカスタマイズできるんだ。
G たまんないですよね。お祭りのついでにぜひ立ち寄りたいです。
秋田竿燈まつりついて

G 続いて秋田竿燈まつり。
高橋 竿に燈るって書いて、かんとうまつりって読むんですね。
G その名前の通り、竿に明かりの燈った提灯が吊り下がっていますが、これは稲穂に見立てているらしいです。
江戸時代の七夕が由来で、五穀豊穣と厄除けを祈願して行われるお祭りです。青森ねぶた祭と同じく国の重要無形民俗文化財で、4日間かけて約100万人を動員します。
高橋 五穀豊穣だから、たわわに実っているように見せているんでしょうね。
G このお祭りの見どころは約12m、50kgの竿燈を体の1点に乗せてバランスを取る妙技です。この竿を手とか腰とか、肩とかで支えているんですが、この提灯に燈っている明かりは本物の火だというからさらに驚きですね。

高橋 え、危なくないんですか?
G 危ないですよ。実際、けっこう竿が倒れてくるみたいです。直撃したら大惨事。
高橋 こわ。
G そう。だからお祭りの間は、観客もこの竿燈から目を離してはいけないんですって。火は、倒れても提灯に引火しない仕組みになっているらしいですけどね。
高橋 そうなんですね。この先っぽについているのは何ですか?

G これは御幣です。4日間かけて町を歩きながら邪気をすべてここに集めて、お祭りが終わった翌日、この御幣だけを川に流すんですって。
高橋 へー。このお祭りも流すんですね。
G 灯篭は流さず、この御幣を流すんです。提灯のほうはお祭りが終わったら、中のろうを落としてキレイにしまいます。
高橋 次の年も使うってことですね。提灯にはいろんな模様があるみたいですね。

G これ、町や会社の紋が入っていて、この竿燈がどこの所属かをアピールしているそうです。もし高橋さんが持つ場合は、蜂須賀卍を入れるというイメージでしょうか。
高橋 なるほど。バックボーンを背負うみたいなことですね。
G はい。竿燈の持ち手がその妙技を競う大会もあるらしいですから。
そして、会場ではご当地グルメフェスが開催されるので、秋田の美味しいものをいろいろと食べることもできます。
高橋 お祭りっぽいですね。
G 竿燈まつりが行われる秋田駅の近くには古い建築物もけっこう残っているので、お祭りの前後にはそういう所も行きたいですね。

例えば、この建物は旧秋田銀行本店で重要文化財。現在は「秋田市立赤れんが郷土館」となっています。外壁は1階が磁器のタイル、2階が赤レンガになっています。レンガ部分は小口積みですね。

ほかにも、明治時代から昭和時代にかけて使われていた生活道具やおもちゃ、家電などが展示されている「油谷これくしょん」という施設も。ここは廃校となった金足東小学校の校舎を使っていて、レトロな空間を味わうことができます。
高橋健介が見に行きたい東北の夏祭りは?
G いかがでしたか、東北の夏祭り。
高橋 今回連載の8回目ですけど、その中で一番悩む。
お祭りって、五穀豊穣とか無病息災とかいろんな思いを込めてその地域の方たちが脈々とつないできた文化だと思うと、規模の大きさや知名度では比較できないっていうか。
G それぞれ歴史と魅力がありますしね。
高橋 そう。だからどっちのお祭りも行きたい。
G 初のジャッジしないパターンもありですよ。
高橋 はい。……いや、けどのっけ丼がね、ずっと頭に残っちゃってるんですよ。

G えー、意外です。
高橋 のっけ丼、刺さったな。
G 高橋さん、食にあまり興味がないかと思っていたので、何か嬉しいです。
高橋 そんなことないですよ。
以前、静岡の方までサウナに入りに行ったんですけど、その時も海鮮丼を食べて。海鮮丼好きなんですけど、決まったネタがのっているのが普通じゃないですか。でものっけ丼は自分で好きなように作れるっていうのが嬉しい。
G そうですよね!
高橋 それにお祭りって、みんなで飲んだり食べたりするのも含めてお祭りっていう意識あるじゃないですか。そう考えたら、のっけ丼があるのは強いですね。ワイワイ歩きながら選んだりして、普通に楽しそう。
だから、お祭り自体はどっちも優劣つけがたいけど、のっけ丼があるから青森かなあ。
G そういえば、青森ねぶた祭は一般の方も参加できるんですよ。現地で衣装を貸出してくれるので、ハネトを体験できるらしいです。

高橋 「ラッセラーラッセラー」って一緒にできるんだ。それも面白そうですね。
G 高橋さんがハネトをやっているところ、見てみたいです。
高橋 笑。
<つづく>
※2022年6月下旬取材時点の情報です。
1994年12月24日生まれ。東京都出身。2014年に舞台『ハマトラ』で初主演、2015年には『ウルトラマンX』で主演として大空大地役を務める。『テレビ演劇 サクセス荘』、ミュージカル『刀剣乱舞』など数々の人気作品に出演している。
2022年8月5日(金)から8月21日(日)にかけて東京都 / 大阪府で開催される、『ワールドトリガー the Stage』大規模侵攻編 に出演。8月4日(木)〜8月11日(水・祝)「Fanicon presents リアル謎解きゲーム 高橋健介誘拐事件~あなたに届いた不思議な招待状~」に映像出演。9月3日(土)・4日(日)朗読劇「アルバート家の令嬢は没落をご所望です」に出演予定。
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