「つながる地域のものづくり」第2回 金子将浩氏【喫茶文化の根付く京都で、確かなコーヒーを】

「つながる地域のものづくり」第2回 金子将浩氏【喫茶文化の根付く京都で、確かなコーヒーを】

地元を拠点とし、ものづくりに取り組む人々にスポットを当てる本企画。
日本が誇る技術を継承する職人、古き良き伝統を紡ぐ工房、地元を盛り上げる取り組みに挑戦する企業など、地域に根差してものづくりと向き合う匠たちを紹介していきます。
記事の最後には、“匠が惚れる匠”として、次回の出演者へバトンをつないでもらいます。

第2回は、歴史や伝統が息づく京都で、コーヒーを通して五感が豊かに震えるような時間を提供しているWEEKENDERS COFFEEの金子将浩氏。「日本人には突き詰める才能がある」そう語る金子さんのものづくりの心とは。

コーヒーがつなぐ縁

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自分の事業を始めたのは2005年のこと。当時は今ほどスペシャルティコーヒーが主流ではなく、私もはじめは左京区でカフェとしてお店をスタートさせました。カフェなので、フードやドリンクも出していました。

漠然とカフェをやりたいという思いから始まった事業ですが、やっていくうちに「これでは自分が本当にやりたいことがお客様に伝わらない」と感じ、2011年にカフェから自家焙煎コーヒー専門店に変えて、2016年にはWEEKENDERS COFFEE TOMINOKOJIをオープン。富小路は人通りも多く、またカルチャーもしっかりしていたので、この場所を選びました。

毎週豆を買いに来る地元のお客様もいらっしゃいますし、京都という場所柄、旅行のついでに寄ってくださる方も。「京都に行った友達が勧めてくれたんだ」と紹介で来てくださる海外の方も多いですね。京都でコーヒーがつないでいく縁を感じています。

京都ならではの空間を意識

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コーヒーが色々なメディアで取り上げられるようになるにつれて、海外で評判のいいお店をただマネする店舗が増えてきたように感じています。もちろんそれを否定するわけではありませんが、私は京都ならではの空間を常に意識した、コピーでないものを作りたい思いが強くあったんです。

そのために行ったのは、意外に思われるかもしれませんが小さな店舗を作ることです。最初にオープンした左京区のお店は30坪程度でしたが、富小路は約5坪程度。テーブルもなく腰かけがある程度ですが、細部にこだわることができました。

コーヒーって、いまやいつでもどこでも飲める飲み物ですよね。あまりにも間口が広すぎる。だから私が思っている確かなものを提供するには、限られた空間の中が最適だと思っているんです。狭い場所にすることで、お客様一人に対しての濃度が高まり、きちんと向き合えるようになりました。

「Coffee Ceremony」で新しいコーヒーの愉しみ方を考える

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2019年に、お客様としてお付き合いのあった京都のデザインスタジオ「スフェラ」さんよりお声掛けいただいて、日常に馴染みあるコーヒーを、非日常の空間で味わう「Coffee Ceremony」に参加させていただきました。

2020年には、企画当初から「いつかはここでやりたい」と望んでいた念願のお寺、建仁寺両足院にて「Coffee Ceremony」を開催することができました。道具や器、空間のデザインと見立てはスフェラさんによるもので、コーヒーの抽出のための道具は、このプロジェクトの為に特別にデザインされ、手仕事によりあつらえられたものです。

雑音がなく、ただ自然の音が漂う空間の中で飲むコーヒーは香りや味わいを際立たせてくれますし、自分が淹れ慣れているコーヒーでも空間によって感覚が研ぎ澄まされて、より繊細なものになりました。

お客様とお店、一緒に成長していく

セレモニー自体は15分程度で、その後にお客様とちょっとした歓談の時間があるのですが、「豆を挽く音や匂いにより集中できる」「今までにない面白い体験だった」と言っていただけましたし、これがきっかけでコーヒーが好きになった方もいらっしゃいました。

コーヒーを飲んだら終わり……ではなくて、お客様とのコミュニケーションを通じて、お客様もお店側も成長していくような関係作りができたらと思っています。
いずれ「Coffee Ceremony」を京都だけではなく、簡易的な茶室を持って行って、海外でもやりたいという話をスフェラさんとしています。

コーヒーはコミュニケーションをとりながら提供

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京都には色々なところから人が集まります。我々もさまざまな需要に応え、たくさんのお客様を迎えるために朝の7:30からオープンしているんです。人が自然と集まる場所だからこそ、集客のためのプロモーションをかける必要がないので、よりコーヒーに集中できます。そういう意味でもここは最適な場所だと思います。

たまに、お店に来てもSNSで調べた情報だけで注文する方がいらっしゃいますが、それなら自販機でも事足りてしまうんですよね。私はSNSから得られる情報ではなく、実際にお客様がちゃんとお店で感じて共感してもらえるものを提供したいですし、一緒に悩んだり飲んだりしながらコミュニケーションをしっかりとっていきたいんです。

テイクアウトのカップにロゴを入れていないのも、そのための仕掛けの一つ。わざと不都合を作ることで、コミュニケーションを生まれさせています。

京都で自分にできることを積み重ねていく

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今うちのお店は、コーヒー豆を焙煎する際に出るチャフ(もみ殻)を回収してもらい肥料にし、それで農作物を育ててもらう取り組みをしていますが、そういった環境に関わる活動など自分ができることは継続して行っていきたいと考えています。

京都は喫茶文化が根深く残っていますし、たくさんカフェやコーヒーのお店がありますが「うちのコーヒーは、うちのコーヒー」という自負があります。過去にとらわれたり、未来を考え過ぎるのでなく、日々できることをきちんとやっていくのが使命。日々のことを積み重ねてWEEKENDERS COFFEEを作り上げていきたいという思いでやっています。これからもどのような形であっても、媚びることはせず、正々堂々とコーヒーで勝負していくという姿勢は変えないでいたいですね。

金子将浩が京都で出会った変化を恐れない老舗蕎麦屋の16代店主

本家尾張屋の稲岡亜里子氏
本家尾張屋
期間限定カフェでご一緒してから、2020年発売の『そば餅とコーヒー』の商品制作などで交流のある「本家尾張屋」をご紹介したいと思います。寛正六年(西暦1465年-応仁の乱の前年)創業、京都に4店舗を構える菓子と蕎麦の老舗で、その十六代目の当主を務める稲岡亜里子さんです。
写真家として世界各地の人と自然に触れながら、日本の外から京都の自然、家業の蕎麦や蕎麦菓子を見つめてこられた方です。
実は本家尾張屋の「菓子処」を柳原照弘さんが手掛けているなど、前回出演の百田憲由さんともつながりがあります。新しい挑戦を続けているおもしろい方なので、ぜひお話を聞いてみてください。

<第3回 本家尾張屋の稲岡亜里子さんへ続く>

 

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