新連載「つながる地域のものづくり」第1回 百田憲由氏【日本の有田焼を世界のARITAへ】

「つながる地域のものづくり」第1回 百田陶園 百田憲由氏

地元を拠点とし、ものづくりに取り組む人々にスポットを当てる本企画。
日本が誇る技術を継承する職人、古き良き伝統を紡ぐ工房、地元を盛り上げる取り組みに挑戦する企業など、地域に根差してものづくりと向き合う匠たちを紹介していきます。
記事の最後には、“匠が惚れる匠”として、次回の出演者へバトンをつないでもらいます。

第1回は、400年余りの歴史をもつ有田焼の総合商社「株式会社百田陶園」代表の百田憲由氏。新たな有田焼の魅力を追い求める、ものづくりへの姿勢に迫ります。

百田陶園に根付く“ものづくり”の心

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Photographer Credit:Takumi Ota

百田陶園はもともと代々ものづくりを続けているメーカーで、過去にはシカゴ万博やパリ万博に出品するなど、様々なことに挑戦してきました。

現在の百田陶園の前身となる百田家は1647年から窯焼きの仕事に従事しており、ものづくりに対して、400年間色あせることのない、妥協のない姿勢を代々承継してきたんです。

ここで少し私が百田陶園で働くまでの経緯をお話しましょう。私は小学校から高校までずっと野球に打ち込んでいて、高校3年生では甲子園予選の決勝まで行ったんです。その決勝が終わった頃には、すでに新卒募集をしている会社はほとんどなく、そこで父親から紹介された築地の魚河岸に就職することにしました。

しかし上京後まもなく父親が体調を崩してしまい、結局1年半ほどで有田に戻ってきました。そして26歳で百田陶園の代表に就任することになり、現在に至りました。

百田陶園

新しいニーズを見つければ、有田焼はまだ売れる

私が入社した後、1990年頃バブルがはじけて業務用の食器が売れなくなったんです。
それをきっかけに、有田の窯元と商社がものづくりを共同で行う「匠の蔵」というプロジェクトを立ち上げました。

まず第一弾は焼酎グラス。当時、焼酎がとても流行っていたので、焼酎をおいしく飲むためのグラスを開発することにしました。鹿児島県に出向いたり、地元の酒屋さんに相談したりしながら、機能や形状について議論し、ベストな形を作り上げ、さらに1つの形で約30種類の柄を展開、ヒットさせることができました。

第二弾は日本酒、第三弾はビール、第四弾はカレー皿と制作を続け、だんだんと需要を伸ばしていったのです。伝統に頼り続けるのではなく、新しいニーズを探って、それをヒントにしていけば、まだ有田焼の新しい市場や必要とされるものづくりができるのだと実感しました。

私たちが世界最大規模の有田焼ショッピングリゾート「アリタセラ / Arita Será」に加入したのは1997年。

元々は一般の方向けに小売りをする場所ではなく、日本全国の小売屋さんが仕入れに来るショールームでしたが、時代に合わせて一般消費者向けのショッピングモールに変化したんです。振り返ると、この時期から一般の方に響くプロダクトについてを考えるようになったかもしれません。

匠の蔵

パレスホテル東京への出店を決断

これで業界も徐々に良くなっていくと思っていた矢先、2008年リーマンショックが起こり、歯止めがかからないほど有田焼の需要も落ちていきました。何をしても売れない、売れる場所がない、何をしたら良いかもはや分からない……打つ手がない状況が長く続いたのです。

転機は2012年。パレスホテル東京の建替えに伴い、そのショッピング・アーケードに出店しないかとお話しをいただいたのです。有田を発信するには、丸の内は最適な場所だという思いがありましたが、失敗したら立ち直れないのではないかという気持ちもあり、なかなか決断ができませんでした。半年悩んでついに出店を決断。

打つ手がない今の状況を打破する最後のチャンスだと思ったんです。

出店にあたっては、店舗の内装設計やデザインをお願いしたのが柳原照弘さん。当時彼は若手の中で伸びしろNo.1と言われていて、国内外からも高く評価されているデザイナーだったんです。

空間やデザインだけでなく、有田を変える

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Photographer Credit:Takumi Ota

柳原照弘さんは当時、大阪の人気和菓子店「餅匠 しづく」の店舗プロデュースしており、そのお店が大事にしている大福にこだわったお店作りをしていたんです。内装はシンプルに、空間の中に大福だけをぽつんと並べて。こんな商売は見たことないと感嘆しました。有田を立て直すために、この人と組んでみたいと思ってお声かけしました。

当初柳原さんは「空間設計は誰でもできるから僕がやる必要はない」と考えて、私からのオファーは断るつもりだったそうです。けれど実際に会って、空間やデザインだけでなく有田を変えていかなければいけないと思っていること、柳原さんには空間設計だけではなくプロダクトから携わってほしいと思っていることなど、私の思いのたけを伝えると、身を乗り出し「それならやる」と快諾してくれました。

そして現在、彼には百田陶園のクリエイティブディレクターを務めてもらっています。

彼の人と人のつながりや人との関係性を大切にする取り組み方を見ていると、良質なものを生み出すためにはプロダクトのアイデアはもちろん、関わる人や地域も大事であることを再確認させられます。そしてプロダクト全体をストーリーとして発信しながらものづくり、ブランドづくりをして、それが結果的にプロダクトを成長させることに繋がると感じています。

「つながる地域のものづくり」第1回 百田陶園 百田憲由氏
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